株式会社マルホ


木材用語集



仕口(しぐち)と継手(つぎて)
「仕口」とは柱と梁などなど2つ以上の木材を組み合わせ、接合する方法であり、異なる方向の木材をつなぐ場合に用いられる名称である。これに対し「継手(つぎて)」とはつなぐ方向が同じ場合の名称である。
「仕口」や「継手」は必要に応じて様々な組み方が昔の大工さんにより智恵を絞り考えられてきたがプレカット加工や接合金物の普及と共に簡素化され、複雑な組み方は一部の建築物でしか見られなくなってきている。昔ながらの仕口加工や継手加工は機械加工では困難なものが多数あり、昔ながらの手刻みで加工を施された建築物は日本の重要な木造文化を象徴する一つでもある。






自由水(じゆうすい)


「自由水」とは木材の細胞内腔や細胞壁の隙間にあって比較的自由に移動できる水分のことをいう。
「自由水」が蒸発して木材細胞からなくなり、「結合水」のみになったときの含水率はおよそ30%であり、この状態を「繊維飽和点(せんいほうわてん」といい、「繊維飽和点」を下回る辺りから「結合水」の蒸発が始まり木材の収縮が始まることになる。 





集成材(しゅうせいざい)


集成材とはラミナ(厚さ5センチ以下の板)、または小角材をその繊維方向を互いに平行にして、厚さ、幅および長さの方向に接着剤を用いて集成接着した加工木材である。
「構造用集成材」と「造作用集成材」に大別され構造用では目視および機械的方法により品質の等級区分(グレーディング)をおこなう。この等級区分に用いられるのが「ヤング率」である。
構造用では、その使用用途に応じて等級品質が同じ物を接着した「同一等級構成構造用集成材」や外層と内層に等級差をつけた「対称異等級構成構造用集成材」に分かれる。集成材は必要に応じた強度のラミナを組み合わせて接着ができれば、材質が均一で長尺で断面の大きなものを製材品よりコストを安くできるというメリットがあるが、一方で製造元は必要外の強度のラミナの処理に苦労するデメリットもある。
接着の際の接着剤には微量ながらもホルムアルデヒドを含む「レゾルシノール樹脂接着剤(茶褐色)」やホルムアルデヒドは含まないが水分に敏感な「水性高分子イソシアネート系接着剤(乳白色)」が多く用いられている。
構造用集成材の項も参照





白太(しらた)


「白太(しらた)」とは樹木の樹皮に近い色が淡く明るく白っぽい部分を指す。「白太(しらた)」または「辺材」と呼ばれる。
これに対し樹木の髄の周りを取り巻く樹心に近い部分は「赤身(あかみ)」と言い、赤味を帯びているため「赤身」または「心材」と呼ばれる。
「白太」部分は放射組織などの柔細胞がまだ生きており、仮道管や道管が根から樹冠へ水を上げる通路にあたり、水を多く含む部分となる。「赤身」部分は、樹木の生長過程で白太(辺材)部分の木材細胞が成熟していった部分であり含水率が低く、この際、微生物の嫌いな樹脂や色素といった成分を合成し、強い抗菌作用をもったフェノール系の物質(タンニン)を生成する。これが、木材製品になった際に乾燥段階で水分と共に表面に溶けだし、白太が一時的に茶色く変色することがある。これが木材でいうアク(灰汁)である。







人工乾燥(じんこうかんそう)


「人工乾燥」とは乾燥機(釜)と呼ばれる大きな機械に木材を入れるなどして装置内の温湿度等を人工的に調整することで木材の乾燥を強制的に促す乾燥方法のことを言う。これに対し、太陽の熱と自然の風を上手に利用して、木質を傷めず、じっくり乾燥させていく乾燥方法は「天然(自然)乾燥」と呼ぶ。
「人工乾燥」には様々な乾燥方法が開発されており、「蒸気乾燥」、「高周波・蒸気複合型乾燥」、「除湿乾燥」、「減圧乾燥」など様々な方法があり、更に乾燥される木材の樹種や使用用途に応じて乾燥プログラムが各メーカーによって開発、設定されている。人工乾燥では、木材の乾燥環境をある程度人工的に操作できるため、生産性が良い他、木材表面に乾燥割れを出さないような乾燥や、含水率を自然界ではクリアできないような数値まで下げることも可能である。一方で、高温や過度な乾燥により、変色や内部割れや木質を傷める危険性もある。
「天然(自然)乾燥」では、木材の乾燥環境を人工的に操作することは困難で、広い場所と長期間の在庫が必要なため生産性が悪く、長期間に渡って細かく木材に手間をかけてやらないと表面割れが発生し易く、含水率も自然環境で可能な限りまでしか下げられない。一方で、木材が高温状態や過度な乾燥環境にさらされる事もなく木材細胞と抽出成分を最大限に生かした乾燥が可能なため、変色は少なく内部割れはなく木材本来の芳香が残った木質を傷めていない乾燥が可能である。
木材乾燥においては「人工乾燥」でも「天然乾燥」でも、何を目標にどのように製材し乾燥させるかで、出来上がる製品の品質は様々である。
株式会社マルホの「マイルドドライ」は木材の特性をうまく利用した上で商業ベースに乗せるために「天然乾燥」と「高周波蒸気複合型乾燥」を併用した乾燥方法を行い安定供給と安定した高品質を維持しています。






芯去り材(しんさりざい)、芯込み材(しんこみざい)


「芯去り材」とは丸太の中心にある髄を含まない製材品であり、「芯込み材」とは丸太の中心にある髄を含んだ製材品である。丸太の中心にある髄(芯)周辺のわずかな部分は幼齢(未成熟)部分にあたり木質としては不安定な部分である。そのため、この部分を製品内部に多く含む製材品は曲りやヒネリを発生し易いという傾向がある。ただし、丸太の外周部分に限りなく近い部分まで含んだ製品であればその傾向はやや抑えられる場合もある。「芯去り材」や「芯込み材」は使用用途や丸太からの製材歩留まり等を考慮した木取りによって様々である。





針葉樹(しんようじゅ)


「針葉樹」は、その木部組織の90%が木を支える骨の役割と水を通す食道の役割を兼ね備えた「仮道管」でできている。縦長の細胞が比較的配列よく並んでおり真っ直ぐな材が取りやすく材料としては素直で使いやすく強度があるため、建築用材として優れた特質を備えている。
春から夏にかけて形成される淡い色の「早材(春材)」と夏から秋にかけてつくられる濃い色の「晩材(夏材)」による年輪が比較的明瞭のため年輪の確認が容易なものが多い。
「針葉樹」のうち代表的なものには、スギ、ヒノキ、ヒバ、ベイマツ、アカマツ、ツガ、スプルースなどがある。これに対し「広葉樹」のうち代表的なものには、ケヤキ、ブナ、ミズナラ、クリ、ヤチダモ、チーク、ラワン(メランチ)などがある。
⇒広葉樹の項も参照




樹脂道(じゅしどう)


「樹脂道」とは針葉樹材の組織構造のうちエピセリウムという細胞が分泌する「ヤニ(樹脂)」が蓄えられる空洞を言う。この樹脂道の有無や大小は様々で正常な樹脂道はマツ科のトウヒ、カラマツ、トガサワラ、マツの各属の樹種で形成され、幹や枝を切ると「松ヤニ」などの樹脂が微かににじみ出てくることがある。ただし立木時に受けた傷などに由来する樹脂道(傷害樹脂道)は、通常樹脂道を形成しないスギ、モミ、ツガなどにも形成されることがある。




収縮率(しゅうしゅくりつ)


木材は乾燥すると寸法が小さくなり(収縮)、逆に水分(水蒸気)を吸うと大きくなる(膨張)性質があるが、この現象が起こるのは「自由水」が抜けきった繊維飽和点(含水率約25~35%)以下のときだけである。この時の木材の収縮の度合を「収縮率」といい、含水率1%あたりの収縮率を「平均収縮率」という。
木材は細胞組織の配列と水分の出入りの関係で接線方向と半径方向と繊維方向で収縮率が大きく異なり、これを「収縮の異方性」という。接線方向の収縮が半径方向や繊維方向に比べて大きなものとなっており接線方向:半径方向:繊維方向=10:5:0.5となっている。




JAS規格「製材のJAS規格」


JAS規格(日本農林規格)とは農林水産大臣が制定した品質および表示基準のことで5年ごとに改訂されている。このうち「製材のJAS規格」とは木材を資材として利用する際の寸法、材質、強度性能等の品質が明確で安全性に優れた製品を供給し、施工の合理化、木造住宅及び木造建築物の振興に寄与することを目的として制定されている規格である。このうち「製材のJAS」は一般材(構造用製材、造作用製材、下地用製材、広葉樹製材)、押角、耳付き材及びまくら木に係る規格をそれぞれ制定している。
㈱マルホで生産されている米松製品は構造用製材の枠組に含まれる製材品がほとんどである。このうち梁や桁に使用される製品の大半は「製材のJAS規格」の「目視等級区分構造用製材の甲種構造用Ⅱ2級」という規格、若しくは「機械等級区分構造用製材」という規格部分にあてはまるが、弊社ではJASの認定は現在のところ受けていない。この理由としては、「弊社の製品は求められている規格の多くをクリアできているため取得の必要がない」ことと、乾燥材に関しては「天然乾燥は認めないという見解を現在農林水産省が出している」ためである。
歴史的な建造物は天然乾燥材で作られ現存している事と木材業界に携わる方の多くが天然乾燥が一番良いと評価している事と、人工乾燥は如何に天然乾燥に近い木質を保持したまま乾燥し安定供給を行い商業ベースにのせるかを目指している点を考慮しても天然乾燥は認められるべきである。
天然乾燥材でも繊維飽和点以下で、且つ指定された含水率まで低下していればJASで認められるべきなのに残念なことである。また、天然乾燥材の需要は木材業界内では確実に高まってきていることも考慮していただきたい点である。
以下に「弊社の製品規格」と平成19年に制定されたJASの「目視等級区分構造用製材の甲種構造用Ⅱの2級の材面の品質」と「機械等級区分構造用製材」の規格を表示しておくので比較してみてもらいたい。なお、平成24年度中には一部改訂された規格が公表される予定である。


㈱マルホ 製材のJAS(平成19年農林水産省告示)
製品区分 GR平角製品規格 米松乾燥材 目視等級区分構造用製材 機械等級区分構造用製材
マイルドドライ平角製品規格 甲種構造用Ⅱ
材面の品質 目視等級区分甲種構造用Ⅱの2級に準ずる 2級 目視等級区分乙種構造材の3級を満たすこと
節(材面における欠け、きず及び穴を含み、集中節を除く。) 径比が40%以下であること 径比が40%以下であること 狭い材面 径比が40%以下であること 径比が70%以下であること
欠け節 径比が25%以下であること 径比が25%以下であること 広い材面 材縁部 径比が25%以下であること
抜け節 径比が25%以下であること 径比が25%以下であること 中央部 径比が40%以下であること
※芯割り製品の場合の流れ節については問わない
集中節(材面における欠け、きず及び穴を含む。) 径比が60%以下であること 径比が60%以下であること 狭い材面 径比が60%以下であること 径比が90%以下であること
広い材面 材縁部 径比が40%以下であること
中央部 径比が60%以下であること
丸身 木口 20%以下であること 20mm以内、長さ200mmまで 20%以下であること 30%以下であること
中身 材長の1/4以下であること 20mm以内、長さ600mmまで
割れ 材面 問わない 割れ幅2mm以下とし、2材面へかからないこと 問わない 問わない
貫通割れ 木口 長辺の寸法の1.5倍以下であること 程度の重いものは不可。利用上支障のないこと 木口 木口の長辺の寸法の1.5倍以下であること 木口の長辺の寸法の2.0倍であること
材面 材長の1/6以下であること 材面 材長の1/6以下であること 材長の1/3以下であること
目まわり 木口の短辺の寸法の1/2以下であること 繊維組織剥離のため不可 木口の短辺の寸法の1/2以下であること 利用上支障のないこと
腐朽 軽微且つ利用上支障がないこと 1:程度の軽い腐れの面積が腐れの在する材面の面積の10%以下であること 程度の軽い腐れの面積が腐れの在する材面の面積の30%以下であって、かつ、程度の重い腐れの面積が腐れの在する材面の面積の10%以下であること。ただし、土台用にあっては腐れがないこと。
2:程度の重い腐れがないこと
3:土台用にあっては、腐れがないこと
曲り 3m 15mmまでとする 5mmまでとする 長さに対し0.5%以下であること。ただし、仕上げ材にあっては、0.2%以下であること 長さに対し0.5%以下であること(3mで15mm、4mで20mm、5mで25mm、6mで30mm)
4m 20mmまでとする 8mmまでとする
5m 25mmまでとする 8mmまでとする
6m 30mmまでとする 10mmまでとする
狂い及びその他の欠点 顕著でないこと 顕著でないこと 利用上支障のないこと
含水率と 含水率 GR材のため問わない (財)日本住宅・木材技術センターの認定機種である強度試験機とマイクロ波透過型含水率計で1本ずつ測定。 仕上げ材:平均15%以下⇒「SD15」と表示
曲げ性能 仕上げ材:平均20%以下⇒「SD20」と表示
曲げ性能 無垢の木材の基準強度は樹種によって国土交通省から告示されている。米松の無等級材の基準強度は以下のように表現されている。 無垢の木材の基準強度は樹種によって国土交通省から告示されている。米松の目視等級区分甲種構造材2級の基準強度は以下のように表現されている。 曲げ試験により曲げヤング係数を測定し、その数値が、下の表の左欄に掲げる等級の区分に応じ、それぞれ同表の右欄に掲げる数値を満たすものであること。
平均含水率20%以下⇒「SD20」と表示 
基準強度(単位N/㎟) 基準強度(単位N/㎟) 等級 曲げヤング係数
強度試験機による曲げヤング係数は1本ずつ記録しており木口付近に印字したロット番号から確認が可能。これによると等級E110以上の発生率が約80%、等級E90以上で約98%以上を占めている。 (Gpa 又は 10³N/㎟)
Fc(圧縮) = 22.2 Fc(圧縮) = 18.0 E50 3.9以上 5.9未満
Ft(引張り) = 17.7 Ft(引張り) = 13.8 E70 5.9以上 7.8未満
Fb(曲げ) = 28.2 Fb(曲げ) = 22.8 E90 7.8以上 9.8未満
Fs(せん断) =2.4 Fs(せん断) =2.4 E110 9.8以上 11.8未満
E130 11.8以上 13.7未満
※上記のFb(曲げ)からは曲げヤングの区分はE100程度と想定される。 ※上記のFb(曲げ)からは曲げヤングの区分はE90程度と想定される。 13.7以上
※㈱マルホの製品規格は製品生産時の製品規格です。
※「割れ」に関しては通常の乾燥割れは強度的に問題がないと一般的に理解されています。このためJAS規格においても問題にされていません。しかし、これも程度問題であり実用段階レベルでは状況により判別基準が様々です。木材は乾燥し組織が引き締まることで強度を増し、この際に発生する表面割れは軽微であれば問題はありませんが、乾燥割れによる選別基準はメーカーにより様々に設定されています。
※㈱マルホの製品規格は「目視等級区分甲種構造用Ⅱの2級」に準じて作成されていますが、これは弊社の製品では最低レベルと認識し生産しています。㈱マルホでは構造材として最適な製品の提供を考慮し原木の選木、製材、乾燥を徹底して行っています。数々の量産工場の中でもお客様から一定の品質の評価を得ていることが、このことを証明しています。
※曲げ強度(ヤング率)は集成材でも無垢材でも製品1本の状態での目安の数値であり、使用方法、使用箇所によって変化するものと考えられます。木を知り、見掛け上の強度的な数値ばかりにこだわるのではなく、木材を資源として十分に有効利用することが、この業界の使命だと考えます。
※JAS規格において「機械等級区分構造用製材」の材面の品質は目視等級区分乙種構造材の3級を満たすレベルとされています。


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